SDGsファンドの投資先選定条件について

Sustainability Department
小松真実
ミュージックセキュリティーズ株式会社
代表取締役 サステナビリティ部長

小松 真実

SDGsファンドのミッション

当サステナビリティ部では、機関投資家を中心とした法人投資家の皆様に、今までにありえなかった投資対象に、ありえなかったスキームで投資していただくことに取り組んでおります。ESG投資の大きな機運を受け止め、私共が正しいと考える投資対象へ、新たな金融市場を開拓すべく、巨大な資金の流れを生み出すことをミッションとしております。
当社の匿名組合を中心とした投資スキームが、SDGsへのギャップを埋める、社会的リターンと経済的リターンの両方を実現する投資手段として、最も適していると考えております。それは、既存の金融市場を介した間接的なものではなく、ダイレクトに社会の課題解決に使われる資金を拠出できる仕組みだからです。今、機関投資家の皆様にとって、このようなスキームでの投資はありえないと存じ上げています。しかし、この投資先選定条件をあらかじめ示させて頂くことで、少しずつでも、法人投資家の皆様の賛同の輪を広げていきたいと考え、開示させて頂くことと致しました。
世界の金融システムの境界線を広げたいと考えています。
一人でも多くの方々が、この金融システムにアクセスができ、そこから生まれる社会的リターンを享受できるよう、インクルージョンとダイバーシティを実現してまいります。

2020年の感触と展望

まず大きなトピックスと致しまして、東北の県庁所在地における都市のPFI事業にて、協力企業として参画させて頂き、法人と個人、そして、公共と民間の資金を混ぜ合わせるブレンデッド・ファイナンスの仕組みを提供させて頂くこととなりました。また、佐賀県上峰町と、町長の強力なリーダシップの下、包括連携協定を締結させていただきました。中心市街地の再開発に、当部の仕組みをご活用頂く方針です。
また、ある国立大学法人では、サステナブルな社会を作り出すための研究施設を、自治体の費用と民間の投資をブレンドした開発計画を進めるべくキックオフしました。
真っ先にローンチの可能性のある取り組みとして、ある地域の交通機関におけるCO2削減に長期的に効果のある事業へのファンド組成を始めております。
このような展望を踏まえ、今年度機関投資家の皆様に、オルタナティブ投資の選択肢として、多くの投資機会を提供させて頂きます。

SDGs達成のための投資の現状

国連によると、SDGs達成のためには、発展途上国に対して毎年約2.5兆ドルの投資が不足しています。
そのうえ、SDGsは先進国にとっても無縁な問題ではなく、世界的にみると更に多くの投資が必要です。その総額は毎年5兆ドル以上とも言われており、民間資金を活用した「SDGs達成のための投資」に対する期待は年々高まっています。

発展途上国におけるSDGs投資の現状

 投資の目的    SDGs     具体例   年間必要投資額
(単位:十億ドル)
全体的な
投資トレンド
民間セクターの
投資トレンド
発電 発電、送電、配電 370~690 横這い 横這い
運輸インフラ 道路、空港、港湾、鉄道 50~47 増加 減少
通信 固定回線、携帯、インターネット 70~240 増加 減少
水・衛生 産業・家庭への水・下水処理 260 減少 減少
食・農業 農業、研究、地域開発 260 増加 減少
気候変動緩和 関連インフラ、再生可能エネルギー 380~680 増加 横這い
気候変動適応 農業、インフラ、水管理、沿岸部 60~100 横這い データ無し
生物多様性 生態系保護、海洋資源、森林 データ無し 増加 データ無し
健康 病院建設、ワクチンや薬の開発 140 増加 減少
教育 学校建設 250 減少 横這い

出所:UNCTAD(2020)World Investment Report 2020を基に作成

SDGsファンドの投資先選定条件

SDGsファンドへの投資による社会的リターンについて、投資家に明示できるよう、事業が社会や環境に与えるインパクトを具体的・定量的に審査します。

1 SDGs 17ゴールへの該当

  • 事業内容がSDGs 17ゴールのうち、少なくともひとつ以上に該当すること。
  • どの項目でどれだけの社会的成果を出すか、ということを定量的に明示できること。

2 中長期的な目標・ミッション・計画

  • 事業の社会的ミッションが明確であり、WEBサイト等で対外的に表明していること。または、投資が決定した段階で、事業の社会的ミッションを対外的に表明すること。
  • 事業の社会的リターンについて、中長期的な目標・計画を具体的かつ定量的に示していること。

3 資金使途

  • 出資を受けた資金の概ね90%以上を、SDGsに代表される社会的課題の解決を目的とする事業のために使用すること。​

ご参考 当社の考える社会的リターンと社会的インパクト

社会的リターンとは、「当該事業活動の結果、SDGs達成までのギャップをどれだけ埋めることができたか」を具体的数値で示したものです。
社会的リターンは、「社会的インパクト」を巻き起こすための具体的ステップであり、社会的インパクトを巻き起こすために事業者が具体的にどのような貢献をしたかを可視化します。

当社の考える社会的リターンと社会的インパクト

SDGsファンドへの投資による経済的リターンについて、投資対象事業者の事業計画や過去実績の財務・会計的な側面を審査します。

1 事業計画達成時のIRRは最低2%

  • 投資対象事業者が事業計画を達成した場合のIRRは、最低でも2%以上となる分配が可能であること。

2 将来の事業計画(売上や利益の計画)

  • ファンドの分配金支払が可能なキャッシュフローが確保できる計画であること。
  • 事業計画達成のための具体的施策があり、かつ納得的であること。

3 過去実績(あれば)

  • 既存事業の場合、過去実績・過去決算に疑わしい点がないこと。

SDGsファンドの投資対象事業は、社会的意義の大きな事業であるからこそ大きな収益を得ることができ、事業で得た収益を次なる社会的事業に回す、という好循環を目指すべきだと考えています。

1 社会性と収益性が矛盾せず、相乗効果を生み出す関係性にあること

  • 社会性の高い事業であるからこそ、相応の収益を生むこと。
  • 事業で生まれた収益を、既存または新規の社会的事業に回すことで、投資対象事業者の社会性が更に高まること。

投資対象事業に人を惹きつける魅力があり、共感・応援したくなるものであることを重視しています。

1 事業の先進性・オリジナリティ

  • 事業が先進的であり、オリジナリティのあるものであること。
  • その事業者がおこなうからこそ、大きな意義をもつ事業であること。

2 事業の共感性

  • 出資者が事業に対して共感でき、応援したいと思えるものであること。

3 ガバナンス

  • 経営層が、社会的リターンについて誠実に取り組んでいること。
  • 情報開示姿勢に問題がないこと。
  • 自社の社会的な取組について、経営層だけでなく従業員にまで周知されていること。

FAQ

投資先選定条件の詳細を詰めるにあたって、下記のような論点が考えられます。

     項目          具体的内容          回答     
「社会的リターン」の定義 「社会的リターン」とはどういう意味ですか? 投資対象事業によって、会計期間中を通して「SDGs達成までのギャップをどの程度埋めることができたか」ということを数値で示したものを「社会的リターン」と定義しています。
たとえば「投資対象事業によって削減されたCO2排出量」「投資対象事業によって新たに雇用された障がい者の人数」等です。
社会的・経済的リターン両方に対するコミットメントの明確化 投資対象事業者の経営層・実権者に対しては、社会的リターン・経済的リターン両方に対して責任をもって取り組むことが求められるのですか? ガバナンスの観点からも、投資対象事業者の経営層が社会的・経済的リターン両方に対して責任をもって取り組むことは重要です。
場合によっては投資対象事業者との契約書に明記する等、経営層のコミットメントを明確化します。
社会的リターンをどのように評価・IRするか 社会的リターンの評価はどのようにおこないますか?
投資家に対して、投資対象事業の社会的リターンをどのようにIRするのですか?
IRのタイミングや形式はどのようなものですか?
投資対象事業者が自主性をもって、対象事業の社会的リターンを定量的に公表します。当社はその内容を確認し、あらかじめ投資対象事業者が定めた社会的リターンの数値目標の達成度合を評価します。
外部の評価会社等による評価は、必ずしも行いません。
会計期間中の売上報告と同じく、年一度程度IRすることを想定しています。
なお、当社による社会的リターンの評価に際しては、投資対象事業者から提供を受けた情報・数値を採用します。また、これらの情報・数値が虚偽でないことについて、投資前の契約に明記します。
重点項目の策定 投資先を決定するにあたって、重点項目はありますか?
SDGs 17ゴールの中で、特に力を入れて投資する分野はありますか?
現時点では特に重点項目は定めません。
今後、社会情勢等に応じて重点項目を定める可能性はあります。
社会的リターンのモニタリング体制 社会的リターンのモニタリング体制はどのようなものですか?
投資対象事業者が想定していない「負のインパクト」についてはどのようにスクリーニング・モニタリングしますか?
モニタリングについては、前述の通り会計期間中毎年社会的リターンの評価をおこないます。また、それに伴い、事業の改善を促すことができます。
なお、あらゆる事業には不確実性があり、想定できない「負のインパクト」が生じうるものと考えています。
投資前の審査段階で想定できる「負のインパクト」やリスクについては、投資対象事業者とディスカッションを重ね、可能な限り低減させます。また、「負のインパクト」が大きいと判断した場合、投資はおこないません。